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クレーム千夜一夜  <第20夜 言い訳をしない>

私が50年以上愛読している朝日新聞の配達所、所謂「新聞屋」さん(正式には販売事業者というようです)について今回はお話します。

50年以上のお付き合いの中で、この「新聞屋」さんの所在地は何度も変わっています。私が中学生くらいの時は、我が家から歩いて5分くらいのところにありましたが、いろいろな事情で経営者が代わり、そして所在地も変わるのです。3年ほど前にも経営者と所在地が変わり、現在の「新聞屋」さんとなったのです。我が家からバイクで10分くらいのところになりました。

先日、珍しいことだったのですが夕刊が届かないことがありました。粗忽者の私は見落としがあるのではと、何度も小さな新聞ポストの中を確認しました。そのことを「新聞屋」さんに電話を入れました。

「すみません、三春台の川合ですが・・・、夕刊が入っていないようなのですが・・・」と伝えると、多分20代の男性でしょうね、「申し訳ございませんでした、すぐにお届けいたします。三春台〇〇〇〇番地の川合様ですね、すぐにお届けいたします」という言葉が返ってくるのです。そして、10分後にはお詫びと共に届けてくれるのです。1年に一回あるかどうかのことですが、その際には必ずと言ってよいほど同じ「返し」と行動です。すぐに配達をしてくれるのです。

行動が素晴らしいことは勿論ですが、私が皆さんにお伝えしたいことは、この「新聞屋」さんで働いているスタッフの「返し」です。「言い訳」は一切しません。多分、経営者の考え方をスタッフに徹底させているのでしょう。

私が逆の立場でしたらこのような「返し」が出来るかどうか不安です。何故なら、ポストに入れないなんてことはあり得ない、ちゃんと確認しているし・・・?だいたい、家族がポストから出している、っていうことはないの・・・?家族に尋ねてみた?という思いが瞬時に湧き出てしまうからです。自分の「自信」が満ち溢れてしまうからです。その結果、こんな「返し」になるでしょう。「お客様、ポストの投入口に挟まっていませんか?ちょっと見ていただけます?」あるいは「ご家族のどなたかが既に出していることはないでしょうか?確認していただけますか?」と。だって、投入しないなんてことはあり得ませんから、自信がありますから・・・。

同時に、この「新聞屋」さんがこのような「返し」をするのは、新聞の価格が百何十円だからでしょう?単価が低いものぉ~。1つ5万円の商品だったらそんな安易な回答できますぅ~?という言葉が周りから聞こえてきそうですね。

そう、仰る通り、百何十円の新聞だから出来ることかもしれませんね。反論をするつもりはありません。でも、単価の低い商品の場合でも、皆さんはこの「新聞屋」さんのような「返し」は出来ますか?

絶対的な自信を持っている私たちは「間違いなく渡している」「そんなことあるはずがない」「このお客様は勘違いしている」という考え方が頭の中で充満してしまい、ストレートには言わないまでも「お客様の言っていることは少し違うのでは・・・?勘違いしているのでは・・・?」というようなニュアンスの「返し」をしているのが現実ではないですか?

しかも、仮に、お客様の言い分が正しそうな場合は、無意識で「言い訳」が出てきます。「そうですかぁ・・・すみませんでした。新聞を配達する際には、必ず確認するようにと、毎日、注意しているんですけれど・・・、申し訳ございませんでした」「配達件数と新聞数を確認するように言っているのですがぁ・・・すみませんでした」と。

つい、悪気なく「言い訳」の言葉を使ってしまいます。「私たちは常日頃から注意をしているんですよ、手を抜こうだなんて決して考えていません。つい、つい、今回に限ってミスをしてしまっただけなんですよ、お客様、そこのところを分かってくださいね」と。その言葉がお客様には「言い訳」に聞こえてしまうことになるなんて気づかずに言ってしまうのです。

今は、お詫びをしなければならないという際には思い切りお詫びをしましょう。私たちが一所懸命頑張っているかどうかを今は言う必要がありません。

お客様から「ミスを防ぐためにどんなことしているの?」と仮に尋ねられたとしても、調子に乗って「ハイこんなことを注意しています」などと述べてはいけません。お客様は益々エキサイトすることになるからです。「だったらこんなことは起きるはずはないじゃないか、おかしいじゃないか・・・」と泥沼に入っていくことが目に見えます。尋ねられたとしても「申し訳ございません、今回のようなことが起きたということは、私たちの努力が不足しているということです。申し訳ございませんでした」というのがいいですね。

夕刊が入っていなかった、というような重大とはいえないトラブルで、しかも10分後にあらためて配達したという対応をしたにもかかわらず、30分も40分もお客様の怒りが収まらない、という事態になった場合は、その後の私たちの対応は変わってくるのは言うまでもありません。軽微なミスであるにもかかわらず、いつまでも文句を言い続ける相手は「お客様」ではありません。ただの「ハードクレーマー」ということになります。「お客様」には敬意を払って最大限のサービスを提供しますが、「ハードクレーマー」にはそんな必要はありません。「お客様、今回のミスにつきましてはあらためてお詫び申し上げます。再配達もしてお詫びしてもお許しいただけないのであれば、私どもはこれ以上対応することが出来ませんので帰らせていただきます」と伝えて「失礼いたしました」と帰ればよいのです。

お客様とハードクレーマーとの違いを見極めるようになりましょう。

2019.03.31
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